Story of 大黒正宗
私は一大黒正宗の販売店として、映画になっても不思議ではない波乱万丈な大黒正宗の醸造元、 株式会社安福又四郎商店について書いてみたいと思います。
あまり昔の事は割愛して近年の出来事だけに絞りました。
それでも少し長くなってしまいましたが最後まで読んでいただけると嬉しいです。

大黒正宗の醸造元『安福又四郎商店』は1751年創業、灘の老舗の酒蔵です。
 1900年台に臨済宗妙心寺派管長、山田無文氏に「大黒正宗」の名前をもらい、発売したのが始まりです。
 太平洋戦争を乗り切り、高度経済成長期には大量生産できる機械設備を導入、灘の中堅蔵とし て一時期は、東京に営業所を持ちラジオCMをするまでになりました。
 しかし、1995年阪神大震災で被災、木造蔵が全壊する痛手を被りました。
量産から手造りへ

 その時、安福節子 社長 と次女の安福啓子 専務は、手造りの小さな蔵として再出発する決断を下します。
 新潟地酒の父ともいうべき早福岩男氏を始め、様々な人からアドバイスを聞き、設備も入れ替え本当にたくさんの障害を乗り越 えて、高木槇夫杜氏のもと1997年、新生大黒正宗が誕生しました。
 コンセプトは「灘の男酒」しっかりとコクのあるお酒を造ることです。
 当初はなかなか販売もうまく行かず、蔵主催の勉強会や色んな方のアドバイスや指導をもらい ながら試行錯誤を重ねて次世代の「灘の男酒」を模索しているうちに、少しづつ地元の日本酒愛好家の間で、そのしっかりした酒 質がみとめられ始めました。
その頃、地元の酒蔵を応援しようと地元の愛飲家、池野英治氏が発起人となり2006年に『大 黒正宗後援会 大笑快(会)』が発足し、地元の会社社長で地域の世話役的存在のの松宮功氏が初代会長となり、年に一度「大黒 正宗ファンの集い」というイベントを行ったり応援活動が始まりました。
 安福啓子専務を中心に、造り手と小売店、そして飲み手の皆様が一体となって地元のお酒を盛り上げ始めた時期でした。
 ところがそんな矢先、安福啓子専務が病に倒れてしまいました。
 そして闘病生活に入った啓子専務の代わりに甥である安福晴久氏が蔵元に戻り、取締役に就任しました。同時期の2011年、 高木杜氏が引退、愛弟子の井上健一郎氏が醸造責任者になりました。
 蔵のこと以外では、2012年に『大笑快』初代会長の松宮功氏から、神戸大学医学部教授(現在は常盤大学教授)の安藤啓司 氏が二代目の会長に就任しました。
この時期は、蔵元、応援団ともに代替わりが起こった時期となりました。
 しかし人は変われど気持ちは同じ、「新しい灘の男酒を後世に残したい」このDNAは変わりません。原酒を中心に『しっかり した旨味とコクのあるお酒』は少しずつ地元の愛飲家に知れ渡っていきました。

新たな地での酒造り


 しかし、さらなる試練が待ち受けていました、2013年、震災で唯一残った鉄筋蔵「大黒蔵」が老朽化のため使用するのが危 険な状態であることがわかりました。
 取り壊しが決定したものの、新たな酒蔵を建設する資金の目処がたたず、これからどうするのか、途方にくれていた蔵元に声がか かります。
 『うちの吟醸蔵を使いませんか?』
 それは、日本で一番生産量の大きな酒造会社「白鶴酒造株式会社」でした。
白鶴酒造は量産のお酒も造っていますが、鑑評会金賞の常勝の酒造会社でもあります。当然、上のクラスはきちんと手造りで造ら れていて、トップクラスの設備も完備しています。それが「吟醸蔵」(白鶴本店弐號蔵)、43号線から見える大きな鉄筋の蔵で す。
 二社で何度も話し合った結果、大黒正宗の造りをしていた井上健一郎氏と奥様の美穂子さん、
二人が出向して原材料も今まで通りのものを持ち込んでの酒造りをすることになりました。


 そして、いよいよ「大黒蔵」が取り壊される日が来ました。
 蔵元も小売店も、愛飲家もとても悲しい思いをしましたが、必ず自社の蔵を再建したいという晴久取締役の意気に感じ、一致団 結して大黒正宗の自社蔵再建に向けて協力していこうと誓いました。

 悲しむのも束の間、2013年の酒造りシーズン到来です。
初めての 弐號蔵 での仕込みが始まります。大黒正宗のあの味が保たれるのか、関係者一同不安にもなりました。しかし、出来上がった新酒はやはりあの大黒正宗でした。

 もっと応援しよう、もっと知ってもらおうという気持ちが強くなり、地元の有志小売店と大笑 快が企画して「今までにやったことない大きな会をしよう」と1000人集めて大黒正宗を応援する会を開くことになりました。
 しかし、そんな時、安福啓子専務が闘病生活の末この世を去ってしまいます。
 啓子専務の志をなんとか継いでいきたい、という思いも加わり、なんとか会を成功させようと、皆が一丸となって準備しまし た。
 そしてついに2015年8月30日 神戸市三宮kiito大ホールにて「大黒正宗再建祈念大会 大黒正宗フェスティバル」が開催されました。
 このイベントには1000人以上の愛飲家が集まりました。
 会場では、大黒正宗の歴史を絵巻風にあつらえた全長10メートルにも及ぶ年表や、様々な歴史的展示物、そして映像ブースで は大黒正宗の酒造りの様子から、 テレビ局の好意で放映されたニュース映像が公開されました。
 飲食コーナーでは大黒正宗を応援する飲食店が肴を提供、お酒は全種類の大黒正宗が飲めるようになっていました。
 フェスティバルは大盛況に終わりました。

 そして、それを見届けるかのように安福節子社長もこの世を去ってしまいました。

 今、新たに社長に就任した安福晴久氏を中心に、営業の池田光雄氏、醸造責任者の井上健一郎氏、醸造担当の井上美穂子さんが 一丸となって頑張っています。
 それを支えていくのが、大黒正宗を応援する販売店・飲食店、大笑快、そして愛飲家の皆様だと思いっています