黒牛という和歌山の酒がうちの店に入荷したのは最近のことです。
和歌山の知り合いの酒屋さんと一緒に飲んでいたときに今、和歌山でいい酒は?という私の質問に返ってきたのが「黒牛」という言葉でした。
飲んで見た感想は、幅のある旨み、辛口だけれどもぴりぴりしたところがなく、ほのかな甘みを感じさせる、なにより濃い酒、「旨い!」というよりは「うめぇ!」と言いたくなるような、楽しい、そして個人的にもとても好みの酒でした。これは、もしかしたら長い付き合いが出来る蔵元さんかもしれない。そう思い、黒牛の名手酒造に行ってきました。
大阪梅田から約1時間30分。
JR紀ノ国線の海南駅から車で10分ぐらいの黒江という場所です。
蔵の前に着くと蔵元さん直営のゲストハウスがありました。
そこでは名手酒造さんの酒を初めとして、黒江の特産物などが販売されています。
奥には、100人程が入れる昔の蔵の古材を使用した、試飲スペースがあり、有料で試飲出来るようになっています。
さて、事務所に赴くと名手酒造の専務取締役の名手孝和さんが迎えてくれました。
専務さんざっくばらんな人でいろいろとお話しを聴かせていただきました。
名手酒造の出荷量は現在800石程で、その約半分が純米酒の「黒牛」で、将来的には1000〜1500石程度の出荷量、純米酒がメインでやりたいということでした。
専務さんの話しでは、高価な大吟醸クラスは量を増やせば、味は確実に落ちるので、これからもあまり、量は増やさないとの事、だからサンプルでも大吟醸クラスは出さないそうです。
さて、話しも一段落着いたので、今は6月なので、酒造りはしていませんでしたが、蔵の方に行きましょうということになりました。
、蔵としては、小さい規模の蔵で、専務さんもしきりと「狭くて」とおっしゃっていました、しかし、設備はなかなかのもので、精米機はコンピュータ制御で、精米の段階に応じて、細かく圧力を調節出来るようになったものを使っていましたし、 (普通酒用の米などは精米所に頼んでもいいけど、純米や吟醸の精米は外に頼むのは不安だからという事で精米機を導入したそうです。)
モト場(酒母を造る場所)や純米や吟醸の醸造所は壁を断熱材で覆って、部屋ごと温度管理出来るようになっていました。
しかし、蔵が建ったのは相当古いらしく、使われている梁などを見ると直径が1メートル長さが2、30メートルはあろうかという大木が使われていて圧巻です。
貯蔵室は二つに仕切られていて、奥が生酒で0度ぐらい、手前が火入れした酒用で5度ぐらいの温度に設定されているそうです。この他に外に貯蔵用の冷蔵コンテナもありました。
貸瓶 昔はこうした通いの瓶が流通していた、これぞ完璧なリサイクル
蔵を見せていただいた後は、社長さんがほとんど趣味で造ったという資料館に連れて行っていただきました。ここの資料室はもともと酒蔵だったものを改造したもので、そんなに広くはありませんが、集めているコレクションはまさに圧巻で、よくぞここまで詰め込んだという程ぎっしりと、それこそ江戸時代の酒造りの道具や精米の資料、斗瓶、ラベル、精米用の水車と木製の精米機、などが所狭しと展示していました、このコレクションは日本でも(いや、世界でもですね)指折りのものだと思いますので、興味のある方は一度見に行かれたらいいでしょう。
そのあと、専務さんとしばらく、仕事関係の話しをして帰路につきましたが、よく勉強されているしっかりした専務さんでした。 |