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灘の新世代

昔はこの蔵元は「福鶴」と名乗っていました。全国でも「福鶴」という名前の蔵元は当時、3つあったため、平成8年になって独自性を強調する為、海岸近くにあるので「浜福鶴」という名前に改められ、「浜福鶴銘醸」と会社名を改めました。
 浜福鶴は現在埼玉の酒蔵小山本家が親会社です。小山本家の創始者小山屋又兵衛はもともと播州の出身で灘で酒造りを学び、埼玉で創業ました。小山本家酒造自体は時代の流れとともに、経済酒を造るようになりました。しかし、本当に良い酒を創始者が酒造りを学んだ灘で造りたいという思いから、買い取ったそうです。
 浜福鶴の大吟醸が「小山屋又兵衛」と名づけられているのはそいういう物語があるのです。
 
 この蔵元は地元蔵として、震災前からのおつきあいでしたが、震災の時は蔵が全開し、跡形も無くなっていて、再起不能かと思いました。
 しかし、小山グループの支援を得て現在のような見事な最新の設備を伴った蔵元に生まれ変わりました。
 酒は若いながら抜群のセンスを持つ小寺氏を中心に醸造され、平成3年から現在まで8回も全国新酒鑑評会で金賞を受賞しています。

 浜福鶴の代表銘柄「空蔵」は震災の時、当時の杜氏が屋根も無くなり「空しか見えないな」と呟いた事から、震災の苦労を忘れずゼロから再出発しようと名づけられたのが「空蔵」という名前なのです。
 「空蔵」は近代の日本酒の特徴「フルーティな香りと透明感のある旨味」を持つ濃厚ながら非常に飲みやすいお酒に仕上がっています。 
 
 「空蔵」に引き続いて、もう一つ、旨味の空蔵に対して生もと仕込みの「七ツ梅」を立ち上げ
ました。「七ツ梅」は古く江戸時代の伊丹にあった木綿屋という酒蔵の銘柄でしたが「
剣菱、男山」と並び称される大奥の御前酒として用いられていたそうです。
 それが、諸事情で廃業小山本家と同じ埼玉の田中藤左衛門商店に受け継がれておりま
したが、それを小山本家が受け継ぎ、浜福鶴銘醸で300年ぶりに復活する事になったのです。
 フルーティで辛口のキレの良い酒にしあがっています。

 醸造担当 小寺宏明さん

 六甲山系川の中でももっともきれいな水質を持つ清流「住吉川」その河口のすぐ近くに浜福鶴銘醸はあります。

 蔵の創業は江戸末期と言われていますが、平成元年に世界鷹グループに入り、特定名称酒専門の蔵として再スタートしました。

 しかし、平成7年の阪神大震災で古かった木造の蔵は全壊、跡形もなくなってしまいました。現在浜福鶴銘醸の代表的銘柄「空蔵」はこの時、杜氏が蔵の跡地に立ち、「空だ・・・」とつぶやいたことから一からの再スタートという意味で「そらの蔵」「空蔵」(くぞう)という名前がついたそうです。

 

インタビュー

 「醸造についてどのうよな点に気を配っていますか?」

 との質問に。

 「全てについて気を配って醸造していますが、すべての造りに共通しているのは熟成によって味わいが向上するような造りだということです、だから新酒の頃は若干荒いかも知れませんが、秋になり、熟成が進むと旨味がどんどん出てきます」

 「つまり熟成した酒で判断して欲しいという事ですね」

 「そうです」

 「造りはどのあたりまで手づくりで造っているのですか?」

 「うちは近代的なつくりの蔵なので、よく勘違いされるのですが、うちの造りは重要なところは全て手作りです、蒸しを使っていますし、麹造りもすべて手作業です。機械を使うのは人間がするよりも、機械でやった方が品質の為に良いと判断出来る場合、例えば、もろみの温度管理などだけです」

 「火入れ酒は全て瓶火入れと聞いていますが」

 「そうです、その方が、品質の為には良いからです」

 ちなみに通常のお酒は瓶詰めする直前に加熱殺菌をしますが、「瓶火入れ」(瓶燗)と呼ばれる殺菌法は 具体的には大きな水槽に水を張り、そこに瓶詰したお酒を漬けて、ボイラーの蒸気をヒーターに通して、除々に温度を上げ、60度強になると10-15分その温度をキープし、冷水を入れて急速に冷却します。

 清酒の妙な揮発成分が瓶に封じ込められた状態で殺菌されるので、豊かな風味を残しますが、非常に手間のかかる方法なので、通常の蔵であれば、大吟醸など、超高級酒にのみ使われる殺菌法です。

 浜福鶴では、1900円の本醸造でさえ、この方法で火入れされているということですので、品質へのこだわりようが良く分かります、しかも、私も蔵で偶然瓶火入れをしている現場を見るまで、知りませんでした。彼らはそれを売りにしていないのです、つまり、出来た酒で評価してくれという姿勢です。

 

「そのまんま」ということへのこだわり

空蔵シリーズについての質問

 

 「空蔵」のコンセプトは「醸造したものへは何もしない」という事です。通常の清酒の場合は醸造したお酒を加熱殺菌して貯蔵、さらに濾過、加熱して瓶詰します。

 しかし、「空蔵」の場合搾られたお酒はタンクにのまま貯蔵され、澱を沈めて、上澄みを汲み上げてそのまま瓶詰する本生の無濾過(むろか)のお酒です。

 ワインの世界でも限られた名だたる生産者の間でのみ行われているこの方法を「空蔵」でも実践しているのです。だから、この酒は要冷蔵のかわりに、とてもフルーティな生酒の香りと芳醇な味わいかそのまま瓶に込められているのです。

 では、この「空蔵シリーズ」について醸造担当の小寺さんにいろいろお聞きしてみました。

店主 「空蔵シリーズを造るのに目標とした酒はありますか?」

小寺さん 「最初は奥播磨みたいなタイプの酒を造ろうと思いました。幅と旨味のある酒です、でも、今はだいたい空蔵のスタイルが出来たので、後はいかにこの方向性でいいものを造っていくかですね」

店主 「空蔵シリーズの特徴というとどういうところにありますか?」

小寺さん 「いろいろなタイプのものを造っていますが、基本的に熟成によって良くなっていく酒、それも生の無濾過でということです」

店主 「空蔵シリーズでも、山田錦雄町では味わいにだいぶ違いがありますが」

小寺さん 「米の特質を生かしてという事で造りを変えています、例えば空蔵山田錦のもろみ日数は35日ですが、空蔵雄町のもろみ日数は50日でそれだけ低温で引っ張り、大吟醸タイプのまろやかな酒質を狙っています、ただ、腰砕けの柔らかな酒という事ではなく、しっかりした腰のある熟成によって味が向上するものです」

 小寺さんの話は確かにうなづけるところがあります、平成11年春に限定で発売された山田錦の袋搾り大吟醸精米歩合40%で袋搾りにもかかわらず、新酒は非常に渋みが強く、まるで長期熟成が必要な赤ワインのようで、とてもまだ飲める状態ではありませんでしたが、10月に試飲するとその渋みが旨味に変化し、とても深みと味わいのあるお酒になっていました。同じ大吟醸でも最近の新酒監評会用の新酒でも柔らかく飲み安い酒とは本質的に異なるようです。力強く、旨味の乗った灘ならではの大吟醸というところでしょうか。

店主 「そういうお酒にするポイントというのはありますか?」

小寺さん 「うちは、南部杜氏の流れを汲んでいますので、乾燥蒸気で硬く締めた蒸米を使います、こうした蒸米を使うことで腰のある長期熟成タイプのお酒ができるんです」

店主 「最後にこれからどういうふうにお酒造りに取り組んでいかれるつもりですか?」

小寺さん 「とにかく、一つのことにとらわれないで、良いと思う事はいろんな事をためしてみたいと思っています、また、これから小酸系の酵母を使ってみたり、生酉元にも挑戦してみたいと思います」

店主 「なるほど、どうも今日はお忙しいところ、ありがとうございました」

 

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