2003.4



2003年4月
◯83/4の手帳から 黒テントの小公演を続けて観ている。映画は「恋の浮島」「注目すべき人々との出会い」など。
◯93/4の手帳から カサヴェテスさん、ゴダールさん、小津さんらの映画をよく観ている。フットワーク健在。

「ふらふらな頭であれこれと」(2003/4/23)

 また間が空いてしまいました。特別に忙しいというわけでも何か変わったことがあったわけでもありませんが、妙に落ち着かない日々です。これまで移民による合州国文学、英語文学をあれこれと読んできて、自分なりに世界の見取り図みたいなものができつつあるように思えていたのですが、イラク攻撃と並行するように、思考の枠組みを鍛え直すべく、産業廃棄物の問題、水を始めとする様々な汚染の問題、京都議定書の問題、日本とアジアの問題など、今まで読んでなかった本を読んだりしてきました。そうしたちょっと焦った気持ちと、会社の仕事である複数の新刊辞書の編集、CD-ROM辞書のユーザーへの様々なアフターサービスや厳しい予算管理(予算を削れば当然関わってくれる人々への細々とした配慮や厄介な交渉も必要になります)などが重なって、これはパンクするかなという手前で何とかペースを取り戻して持ちこたえているところです。
 もちろん何かが片づいた訳ではなく、東ティモールと日本との関係(かつて東ティモールを占領していた日本は、経済的なつながりの大きいインドネシアとの関係を優先するため、国連などでも一貫して同地のインドネシアによる占領を支持し、国連のヒアリングなどに対しても外務省を中心に妨害工作を行ってきた--まるで先の戦争に負けた後も朝鮮支配の継続を図った情報操作に明け暮れて半島の分断を招いた朝鮮総督府みたい)とかも知っておきたいし、パレスチナ問題もブッシュが何かやらかしそうで目が離せないし(知識の少ないわりにかっこ良すぎる言い方ですが)、ぼやっとしていると足下を軽くすくわれそうです。
 でも戦争報道をテレビや新聞で見て(それもかなり合州国よりの甘口ですが)「アメリカって怖い」でも「とりあえず戦争は一段落した」と対岸の火事が消えたふうに感じているらしい人のほうが圧倒的多数で、これを機により突っ込んで考えたいと思ったりするのは少数なのかなと思います。テレビも新聞もほぼ日常の風景に戻っています。まあ、「読売」みたいに一貫して日米は正しい、日本もイラク復興に自衛隊を派遣しろ、もちろん武器使用基準も緩和してと言い続けているメディアもありますし、「朝日」のように坂本龍一さんやGLAYの反戦メッセージが広まらないのはけしからんといった、自分(朝日)も含めたメディア有力者の言うことに人々がついてこない風潮を嘆くエリート意識の勘違いもあったりはするのですが、おおむね不況ではあってもまだまだ途方もなく豊かで娯楽にあふれる国(そして世界のあちこちで人々を傷つけながら知らないふりをしていられる国。また聞きですが、東ティモールの独立運動が、日本を含む先進国からの経済支援・武器輸出に支えられたインドネシアによって蹂躙されているときに、「そんなこと知っている日本人はいないんじゃないですか。みんなが知らないのだからいいんじゃありませんか」と言った外務省の役人がいたそうです。そのくせ東ティモールの独立時に式典で日本代表が謝辞で紹介されなかったなんてことにはすごく敏感。今も日本の参画する同国での事業で、東ティモールにもある原材料をわざわざインドネシアから輸入しようとしているのはけしからんなんて抗議されています)に戻っていると言ってよいでしょう。
 その中でものを感じたり考えたりする者として、伝えあう回路を切り開いていけるのか、パンクしないで模索し続けられればと思います。


「読むだけは読み続けて--3・4月に読んだ本」(2003/4/28)

 また読んだ本と入手元リスト載せます。まだ4月は終わってませんが、すぐ読み終わりそうな本はありません。

3月

藤井貞和『ことばのつえ、ことばのつえ』(思潮社)江東区立図書館経由目黒区立図書館
"Auden: Poems" (Alfred A. Knopf) Amazon.co.jp
舞城王太郎『阿修羅ガール』(新潮社)江東区立図書館
多和田葉子『球形時間』(新潮社)江東区立図書館
『スピッツ』(インタビュー集、ロッキング・オン)江東区立図書館
海外詩文庫版『オーデン詩集』(思潮社)Amazon.co.jp
石渡正佳『産廃コネクション』(WAVE出版)江東区立図書館
宇井純『日本の水はよみがえるか』(NHKライブラリー)神保町・岩波ブックセンター
神奈川県高教組環境読本編集委員会『環境読本』(東研出版)江東区立図書館
C.D.ルーイス『詩をよむ若き人々のために』(筑摩書房)大昔より所有
[続き物]
中里介山『大菩薩峠 7〜8』(ちくま文庫)江東区立図書館
井上雄彦『SLAM DUNK--スラム ダンク 12〜24』(集英社)薫(小6)と真木(小2)と私が江東区立図書館で借りてきたり、福引で当たった商品券で買ったり
許斐剛『テニスの王子様 1〜2』(集英社)福引で当たった商品券で薫(小6)が買った
森川ジョージ『はじめの一歩 6』(講談社)薫(小6)が江東区立図書館で借りてきた

4月

ジュンパ・ラヒリ『停電の夜に』(新潮文庫)神保町・荒井南海堂
金田一京助ほか『新明解国語辞典 第五版』(三省堂)神保町・中山書店(新刊割引--二割引でした)
長尾高弘『石並べ』(ロングテール)ネットでpdfファイル(http://www.longtail.co.jp/poetryd/5th.pdf)で無料配布
松橋隆治『京都議定書と地球の再生』(NHKブックス)江東区立図書館
T.S.エリオット『荒地・ゲロンチョン』(注解対訳本、大修館書店)家人の蔵書
イーサン・ケイニン『宮殿泥棒』(文春文庫)神保町・岩波ブックセンター
鶴見良行『バナナと日本人』(岩波新書)神保町・日本特価書籍(ゾッキ)
E. ケストナー『子どもと子どもの本のために』(岩波同時代ライブラリー)以前より所有
ノーム・チョムスキー『メディア・コントロール』(集英社新書)神保町・岩波ブックセンター
飯島耕一『詩と散文 5』(みすず書房)豪徳寺・玄華堂(ネット古書)
Jose Saramago(Joseのeにアクセント)"The Tale of the Unknown Island" (Harcourt) Amazon.co.jp
淺山泰美『ファントム』(思潮社)恵贈詩集
高橋奈緒子+益岡賢+文珠幹夫『東ティモール』『東ティモール 2』(明石書店)江東区立図書館
[続き物]
中里介山『大菩薩峠 9〜10』(ちくま文庫)江東区立図書館
井上雄彦『SLAM DUNK--スラム ダンク 25』(集英社)真木(小2)江東区立図書館で借りてきた
ほったゆみ+小畑健『ヒカルの碁 1』(集英社)薫が買ってきた
いがらしみきお『ぼのぼの 22』(竹書房)真木が買ってきた
佐々木倫子『動物のお医者さん 1』(白泉社文庫)家人が買ってきた

 流れとしては、前回で記したようなものです。合州国を中心としたイラク攻撃もあって、自分の目がまだ世界の把握にぜんぜん至っていないという上ずった気持ち、自分が言葉を繰り出そうとしてもどうしたらいいのか、どこに向けて繰り出せばいいのか、自分の具体性をなくしたような、底の抜けた不安定な気分のまま、あれこれ読み散らかしています。オーデンさんとかC.D.ルーイスさんとかエリオットさんとか、現代詩のバイブル(?)も読んだり(でも、エリオットさんについては文明論とかの散文はともかく「荒地」はよく分からないということが改めて分かりました。教養のない人間にはただの言葉の音楽です)。そんな中で詩について飯島耕一さんのことをほぼ10年ぶりに思い出し、選集を読んだり、今も近作を図書館で借りてきて読んでいます。飯島さんも相当の教養人ですが、傷つき牙を見せる詩人の野性も持った人、そんな詩人の作品を読んで自分なりの回路を見い出せるかどうか。
 チョムスキーさんの翻訳本に忘れていた隙をつかれ、東ティモール(そしてこの国の「独立」を、同国を無法に占領し続けたインドネシアとの利権関係から、世界で一番妨害した日本国家、外務省、日本の大新聞)のことを読みかじったりしました。
 あとはひたすら子どもたちとマンガを読んでいます(『スラムダンク』は、今の日本のほとんどの文学がかなわない傑作です)。『大菩薩峠』も半分読み終わりました。作者の中里介山さんによれば、この作品は左翼が好んで口にする「大衆」小説ではなく、「大乗」小説、とのことです。


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