2001.2
2001年2月
◯81/2の手帳から 2人の女性の影が手帳にちらほら。何か今思うと楽しそう。田中康夫現長野知事のデビュー小説を社内で回し読み。
◯91/2の手帳から 中原俊監督の「櫻の園」、デヴィッド・リンチ監督の「ワイルド・アット・ハート」、友部正人さんのコンサートなど。ミニコミも同人詩誌もやって、まだフットワークが軽い。
「日本語環境雑談」(2001/2/3)
とりとめなく書いてみたい。まず最近あったことから1、2。友人のいる出版社が数年前から経営不振で資産売却、希望退職によるリストラ、賃金カットなどを強いられていたのだが、あるメーカーの傘下に入って再建という話がひそかに進んでいた。それを毎日新聞が社会面で記事にした。出版不況の一例というような記事で、社員からは表現の自由が侵されるのではないかという反発や危惧の声があがっているといったまとめ方だった。件の友人は激怒していた。付き合いのある社員から聞いた話をお鰭を勝手につけてまとめただけで何の取材もしていない。こうした勝手な記事のおかげで再建話にひびが入る可能性もあるし、印刷屋さんなどの業者さんや執筆者に心配をかけたり、仕事がやりにくくなるだけ。「表現の自由」なんて言っても要するに、企画に対する見方がきびしくなって好き勝手なことができなくなるのではというくらいの話じゃないか、その記事が出て喜ぶ人は誰もいないと。ろくに取材もしないで、「表現の自由」の不安といったステロタイプに当てはめて満足する、やっぱり新聞記者なんていい大学出のエリートで、何か書けば世の中にもの申したという気分になってしまうのかなあ(と、これは私の感想)。
似たような話。近所に何百戸かの大きなマンションが建築中で、すでに完売して完成入居待ちという状態なのだが、土壌に発癌物質のベンゼンなどの薬物が基準値の何十倍か含まれていて、不動産会社はそれを知りつつ、表土を入れ替えるくらいの措置で黙って建設、売買を進めていた。それが臭いなど近所から苦情が出てごまかしきれなくなったが、汚染そのものはちょっとやそっとでは解決できない、寝耳に水の入居予定者も騒ぎだし、都の調査も入って、さてどうしたものかという状況。このことを実は読売新聞のホームページの記事で知ったのだが(同ページで少なくとも2回出た)、私の見た範囲では他の新聞では一切ふれられていない。鳥越俊太郎さんのページで書かれていたことなのだけど、新聞は他紙に記事を抜かれると知らないふりをして、ほとぼりがさめた頃、さも自分たちの特だねであるかのように、同じ事件を扱ったりする傾向があるとのことだ。今度の件もそんな感じかな。だとすれば新聞て、エラい顔したがりの記者たちの私物?? そんな思いがよぎる。
新聞社だとか、大出版社だとか、出発時とか、戦後の苦しい時とかはともかく、今は二代目、三代目があふれ、いい大学出があふれ、役得とか、何か言うとかっこいい、といったことが既得権として当たり前のものとして受け止められている。政治家も官僚も自治体もすべて事情は同じ。文学賞とか文化事業だとか、どこもにぎやかだが、自分たちを疑うことの知らない「相続エリート」たちによる予算とそれを仕切る特権の持ち回りだから、それらによって何かが活性化したという話も聞かないし、不景気になれば途端に予算縮小で先細りなんてことの繰り返し。本当に緊張感を持って言葉が発せられているのかという疑いをもっともっと持つ必要がある。
文学とか表現の世界も同じだ。読書という習慣、読書は何となく勉強になるような気がするとか、読書は嫌な現実から目をそらす安価な手段だとか、何となく文化の積み重ねによってずるずるここまでやってきたが、これからどうなるか。「歴史を見据える長編小説」なんて言い方は簡単にできるし、実際なされているが、順列組み合わせで書いた日本語・日本人の「ここにも文化はあります」的な自己満足じゃないの、なんて思わせられることが多い。何に対して緊張しているかといえば、賞取りや売り上げが心配といったところが現実か。私の最近の気分としては、軽く読めてしまうものはどこかおかしいということ。それはどんなにエラそうなことが書かれていても、実は何の緊張もなく書かれたものだということ。日本語の環境として、誰でも新聞のコメンテーターくらいのことは言えるようになってしまった、それだけ表現が形骸化して浸透した時代を撃つことができるのは、表面的に難しい必要はないが、もっと読む者に対して抵抗感を強いてくるようなものじゃないのか、と思う。たとえば外国語のように、そして思えば30年くらい前に詩を読み出したとき、慣れるまでは外国語を読むように読みにくかったが、言葉の扉を開かれていく強い刺激にひかれて何度も読み直したものだった。
ぐっと来るとか来ないとか、「癒し」だとか言っていても別にいいけど、自分を開いて覗きこんで疑ってみてもいいんじゃないとか、何を見ても聞いても思ってしまう。簡単に読み書きできるものを読み書きして面白いの? エラいの? 以上、漫談でした。
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